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第89回日本整形外科学会学術総会

第89回日本整形外科学会学術総会(JOA2016)を平成28年5月12日(木)から15日(日)までの4日間、パシフィコ横浜会議センター、国立大ホール、展示ホール、インターコンチネンタルホテルを会場として開催させていただきました。

 

わが国における整形外科関連学会としては最大規模の伝統ある本学術総会を横浜の地で、10年ぶりに開催できましたことを大変光栄なことに存じます。会長に推挙していただいてから3年間に渡り、ご指導いただきました日本整形外科学会の理事会、学術集会運営委員会をはじめとする各委員会の先生方、会員の皆様に心より御礼を申し上げます。

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本学術総会の基調テーマは「伝承、革新、そして新たな伝統:Transmission, Innovation and Tradition to the Next Stage」といたしました。現在は、多くの情報が瞬時に入手できる時代であります。そして、情報技術やコンピュータテクノロジーの急速な発展により、医療分野においても革新的な技術や新しい手術機器が次々に導入されております。また、新しい専門医制度の構築や、医学部のグローバルスタンダードに沿った教育改革などまさに新しい時代へと移り変わろうとしております。しかし、これらの新しい技術の基盤には、現在までに諸先輩方が創意工夫をもって開発された治療法があることを忘れてはなりません。日本には関節、脊椎、手外科などの領域で先達が独自に開発し、発展させてきた手術術式や業績があります。わが国独自に開発された治療法や医療技術も多く、今後の日本の整形外科医療をさらに発展させるためには、先輩方の基本的な考え方を知りながら新しい時代を迎えることが重要と考えます。そのため、これまでに発展してきた治療の概念や実際を若い先生方に伝承し、さらなる革新をもって新たな伝統を構築していく必要性を重んじ、このテーマといたしました。

 

本学術総会の準備にあたり、岩本幸英元理事長から日本整形外科学会のグローバル化が提案されましたので、まずは海外での本学術総会の周知を目的に英語版の小冊子やポスターを作成し、米国整形外科学会、欧州整形災害外科学会(EFORT)をはじめ、アジアで開催された学会などで配布し、広報活動を行いました。特に、プラハで開催されたEFORT2015では日本がゲストネーションとなり岩本先生が自ら講演で広報をしてくださいました。また、Bone & Joint Journal には今回の学術総会の開催記事を掲載でき、有意義な広報活動となりました。

 

次に、グローバル化の一貫として開会式を含め学会の運営を再考いたしました。開会式については、例年は初日の朝に開催しておりましたが、今年は初日のランチョンセミナー後の午後から開催し、世界の主要学会の会長に挨拶をお願い致しました。開会式では例年以上の多くの先生方に参加を頂き、また海外ゲストの参列も多く、非常ににぎやかになりました。

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また、海外からの招待者には講演とともにシンポジストとして日本の整形外科医と本音で討論していただけるようにプログラムを企画しました。日本国内と海外からの演者で構成したAmerican Academy of Orthopaedic Surgeons(米国整形外科学会)およびChinese Orthopaedic Association(中国整形外科学会)とのcombined symposiumを含むInternational symposiumを11セッション、さらにInstructional lectureを39セッション(63演題)企画し、海外からの招待演者はフェローを含め総勢64名になりました。人工関節の創始者であるChitranjan S. Ranawat先生、Lawrence D. Dorr先生、脊椎外科の大御所であるRobert W. Gaines先生、整形外科感染の権威であるJavad Parvizi先生などの世界的に著名な先生方から参加の承諾をすぐに頂き、改めて日本整形外科学会の底力を実感いたしました。

学術プログラムでは、関節リウマチ、骨粗鬆症、リハビリテーションなどの境界領域における整形外科の立場を改めて考える必要もあることから、特別講演として京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科教授の久保俊一先生に「整形外科とリハビリテーション」、東京大学大学院整形外科教授の田中 栄先生に「骨粗鬆症の現状と展望」、新潟県立リウマチセンター名誉院長の村澤 章先生に「整形外科と関節リウマチ -滑膜切除から多職種連携-」についてご講演していただきました。また、記念講演ではキヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘先生に「医療改革の国際比較」についてご講演をいただき、講演では数学者であり、エッセイストでもある藤原正彦先生に「日本の国柄‐日本人の情緒から考える整形外科医への提言-」というタイトルで国際化の中での日本人としての自己認識の重要性についてお話しいただきました。

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日本語セッションでは、29のシンポジウム、14のパネルディスカッションを開催して最新トピックについての討論をおこない、将来への発展性のある結論を導けたと考えます。2つのExpert lectureでは、仙台西多賀病院脊椎脊髄疾患研究センター長の国分正一先生と金沢大学大学院機能再建学(整形外科)講座名誉教授の富田勝郎先生に、豊富な経験から特に若手整形外科医へ向けたメンターとしてのご講演をいただきました。スマホ参加型セッション(10セッション)では参加者を交え活発な双方向型討論を行い、また「伝承と革新」シンポジウム(10セッション)では、各分野のエキスパートにより保存治療・手術手技における留意点や新しい知見について講演していただきました。そのほか、45の教育研修講演をおこないました。
 

学会初日には全員懇親会を大桟橋ホールで開催し、料理の鉄人対決(トゥーランドット游仙境オーナーシェフの脇屋友詞氏vs.横浜ベイホテル東急総料理長の曽我部俊典氏)やDixieland Jazzの生演奏など、多くの参加者に楽しい交流の場を提供できたものと思っております。

展示ホールで開催した企業展示も出展社数150社、656小間と最大規模のものとなり、展示ホールをすべて使用することとなり、整形外科関連企業の拡大に改めて驚きました。会場ではそれぞれの企業や団体の最新情報とともに、『おもてなし』として中華街の味や横浜銘菓を参加者に提供いたしました。

学会4日目の日曜日にはロコモの認知度の向上を目的に、『ロコモティブシンドロームをご存知ですか?いつまでも健康で歩き続けるために』と題して市民公開講座を開催いたしました。プロスキーヤーの三浦雄一郎氏とソウル五輪

銅メダリストの田中ウルヴェ京さんを特別講師にお招きし、厚生労働省老健局の佐原康之氏、横浜市健康福祉局局長の鯉渕信也氏、またロコモチャレンジ!推進協議会委員長の大江隆史先生に講演していただきました。総勢1,976名の市民の方々にご参加いただき、大変盛会となりました。横浜市健康福祉局ならびに横浜市体育協会の関係者の皆様に御礼申し上げます。

例年恒例で開催しているスポーツ大会では、野球とサッカーの他に、学会展示場内でのプレーが可能で、多くの参加者が応援できるスポーツとして、バスケットボール(3 on 3)を新たな競技に加えて、開催いたしました。昨年度の途中で全国の大学にお願いして募集させていただきましたが、40校を超える参加校が集い、熱戦が繰り広げられました。前評判の高かった秋田大学が優勝しましたが、第2位の大阪市立大学の奮闘も目を見張るものがありました。野球はグラウンドコンディションの影響で1日延期となったため、準決勝まで勝ち進んだ弘前大学

と兵庫医科大学が同校1位となりました。サッカーでも素晴らしい熱戦が繰り広げられ、優勝は神戸大学で、準優勝は九州大学でした。早朝からの試合に参加された先生方におかれましては大変お疲れ様でした。スポーツ大会は運動器を扱う整形外科ならではのイベントですので、今後の継続と来年の熱い戦いを期待しております。

本学術総会の4日間の会期中は好天にも恵まれ、参加人数は11,941名を数えました。参加者の皆様には、日の光に輝く水面を行き交う船舶、ベイブリッジ、大さん橋国際客船ターミナル、赤レンガ倉庫、中華街、また開会式やセッションの合間に流しました映像、展示ホールで配布しました点心や横浜の銘菓などで、美しい港横浜の景色と味を堪能していただけたのではないかと思っております。本学術総会の企画と開催にあたってはさまざまな関係者の皆様のご支援を得ながら、横浜市立大学整形外学科教室と同門で準備と運営を担当させていただきました。このような大規模な学術総会を横浜で盛会裏に行うことができたのもひとえに多くの方々のご指導とご支援の賜物と衷心より御礼を申し上げます。

来年の第90回日本整形外科学会学術総会は東北大学の井樋栄二会長の下に平成29年5月18日(木)から21日(日)まで仙台で開催されます。多くの会員の皆様が参加され、学術総会を通じて整形外科学の益々の発展と、会のご成功を祈念いたしております。

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